実店舗を持つ企業のLINEマーケティングにおける新しい常識になりつつある「LINEミニアプリ」。
うまく活用してEC売上を作対比5倍まで成長させた企業や人件費の25%削減を見込んでいる店舗も。
LINEミニアプリで実現できる機能や実際の導入事例、2パターンの開発方法から活用可能性を探っていきましょう。
LINEミニアプリとは
LINEミニアプリとは自社サービスをLINE上に無料で公開できる機能です。
2020年から本格的にサービス開始となり、2021年現在では多くの企業や店舗のLINEマーケティングで活用されています。
まずはLINEミニアプリを活用することでどんなメリットがあるのか見ていきましょう。
LINEミニアプリのメリット
LINEミニアプリのメリットは主に3つです。
- OMOが実現できる
- DL不要のアプリを提供できる
- 無料でプラットフォームを利用できる
それぞれ解説します。
OMOが実現できる
OMOとは「Online Merges with Offline」の略。
オンラインとオフラインが合わさった世界を意味します。
LINEミニアプリを活用すれば実店舗に来店した顧客と、ECなどのネット上の顧客データを統合し一貫したマーケティング施策を打つことが出来ます。
これぞまさにOMO。
LINEミニアプリを活用したOMOの実例は後ほどご紹介します。
DL不要のアプリを提供できる
LINEミニアプリはLINEを利用しているユーザーであれば、誰もが利用できます。
追加でアプリをインストールする必要がなく、ユーザーにも提供者にもメリットが。
アプリインストールの手間がかからない
スマホのストレージを圧迫しない【提供者のメリット】
アプリ開発費が比較的安価に抑えられる
LINE上で完結するため、アプリを跨ぐ事によるユーザーの心理的ハードルを抑えられる
アプリストアからのインストールが必要な「ネイティブアプリ」と比べて、ユーザーを獲得しやすいLINEミニアプリ。
EC売上やリピーターの急増を実現しているのも納得です。
また、利用料がかからないところもLINEミニアプリのミソです。
無料でプラットフォームを利用できる
LINEミニアプリはLIFF(リフ)という無料の機能を利用して開発します。
LIFFとは、LINE上でウェブアプリを表示する機能のこと。
LINEの拡張機能として用意されているものの1つです。
プラットフォームの利用自体は無料である点は嬉しいポイントですね。
以上、LINEミニアプリのメリット3つをご紹介しました。
- OMOが実現できる
- DL不要のアプリを提供できる
- 無料でプラットフォームを利用できる
ネイティブアプリとLINEミニアプリの導入を比較して、LINEミニアプリを選ぶ企業。
もしくは元々ネイティブアプリを提供していたものの不振に終わり、改善策としてLINEミニアプリを選ぶ企業。
ネイティブアプリで取りこぼしていたユーザーとの接点をLINEミニアプリで創出する企業。
LINEが提供した新しいアプリのプラットフォーム「LINEミニアプリ」は、確実にデジタルマーケティングの鍵を担う存在になりつつあります。
そんな新時代の立役者は企業や店舗のLINEマーケティングにおいて、どのような場面で活躍しているのでしょうか。
LINEミニアプリの2021年最新活用事例
- デジタル会員証の導入でEC売上5倍
- LINEオーダーで人件費25%減の見通し
- 整理券配布で機会損失の減少
- LINE経由の予約数が予約サイト越え
デジタル会員証の導入でEC売上5倍
開発⽅法:個別開発
サービス提供企業:株式会社パル
PAL CLOSETは300円均一ショップで人気の3Coinsのグループ会社。
これまで自社のネイティブアプリで取りきれていなかったユーザーとのオンライン上での接点獲得やOMOを目指してLINEミニアプリを開発。
デジタル会員証とECをLINEのアプリプラットフォームに乗せて提供しています。
LINEミニアプリの導入効果は甚大でした。
- 新規会員数が約2倍(前⽉⽐)
- 友だち数10万⼈増加 (1ヶ⽉で)
- LINE経由のEC売上5倍増 (前年⽐)
特に目を見張るのは「LINE経由のEC売上5倍」という驚異的な成長率。
LINE公式アカウントの友だち数が10万人の急増を遂げていることもありますが、何よりリテンションの精度の高さでしょう。
一度店舗に来店した顧客に対して、店舗を離れた後でもオンライン上で販促がかけられるようになり、より能動的なマーケティングが可能となっています。
LINEオーダーで人件費25%減の見通し
開発⽅法:パッケージ利⽤
サービス提供企業:株式会社BigBelly
アガリコ餃⼦楼は、LINE上で注文ができるテーブルオーダーのLINEミニアプリを提供。
業務の効率化や人と人の接触機会減少、顧客ロイヤリティの向上を目指しました。
導入効果は以下の通り。
- 来店客の80~90%がLINEミニアプリを利用。
- もともと4名だった店舗スタッフを3⼈に削減可能。
- 導⼊開始1ヶ⽉で、単店舗の友だち数が1,000名近く増加。
また、今後の展望としてLINEのユーザーIDに紐づいて蓄積されている注文情報を活用したダイレクトマーケティングを視野に入れています。
例)
・ハイボールを多く注文されていたユーザーにハイボール1杯目無料クーポン
レジに並ばなくても、LINEミニアプリ上でクレジットカード払いを選べるようにした点も顧客にとって便利なポイントですね。
整理券配布で機会損失の減少
開発⽅法:パッケージ利⽤
導入の目的は店舗混雑による3密状態の回避でした。
自社アプリの開発も比較候補として挙がったものの、個別アプリのダウンロードや会員登録はユーザーの離脱リスクが高く機会損失に……。
そこでインストール不要、LINE IDでユーザーを識別できるLINEミニアプリによる整理券の配布を決めました。
- 店舗スタッフの案内業務減少
- 店舗混雑で顧客が帰ってしまうリスクの減少
ユーザーは順番が近づくとLINEで通知を受け取れるため、行列に並ぶ必要がなく満足度の向上にも繋がりますね。
某テーマパークに行くと「待ち時間が原因でカップルが別れる」と言われるほど多くの顧客にとって「待ち時間=悪」です。
体感的な待ち時間をいかに減らせるかは行列のできる人気店舗の重要課題ですね。
LINE経由の予約数が予約サイト越え
開発⽅法:パッケージ開発
サロンのmilleでは、LINEミニアプリでの来店予約機能を開発。
これまでは予約ポータルサイト経由の予約が8割を占めていました。
しかし、LINEミニアプリを導入したことでミニアプリが最も利用される予約手段に。
ポータルサイト経由の予約には手数料が発生するため、なるべく自社のプラットフォームから予約を獲得したい店舗も多いのでは?
新規顧客の獲得を大手のポータルサイトに任せ、一度来店した顧客はLINEを活用してリピーター化するような棲み分けで成功している店舗も多いようです。
「95%のユーザーがLINEミニアプリの利用継続を希望している」というmilleの調査データからも、顧客と店舗でwin-winの関係が構築できているのが分かります。
以上、LINEミニアプリの活用事例を4つご紹介しました。
- デジタル会員証の導入でEC売上5倍
- LINEオーダーで人件費25%減の見通し
- 整理券配布で機会損失の減少
- LINE経由の予約数が予約サイト越え
ミニアプリを導入することで店舗経営に大きな成長可能性が見込めることが分かります。
では、実際にLINEミニアプリを導入したい場合どんなステップを歩んでいくのか見ていきましょう。
LINEミニアプリ運用開始までの6ステップ
LINEミニアプリを提供するには「審査」を含む6つのステップを進む必要があります。
- エントリー
- 事前審査準備
- サービス事前審査:約1週間
- 許諾→開発
- リリース審査
- リリース:2-3週間
引用:LINE for Business「LINEミニアプリ エントリー窓口」
大まかな流れは「審査→開発→審査」。
開発方法については次の章で詳しく見ていくとして、まずは審査の内容を確認しておきましょう。
事前審査に通らなければ開発さえ出来ません。
LINEミニアプリには審査が必要
まず企画段階、つまりサービス開発前の審査で必要なものは以下の通り。
- LINEミニアプリの企画書
- LINE Developersのアカウント
企画書にはサービスの説明(名称・提供時期・概要等)と開発・実装実績を記載します。
また、申請にはLINE Developersのアカウントが必要になるため、審査に合わせて作成します。
次にリリース審査。
リリース審査ではサービス提供会社の情報と開発会社の情報を提供します。
・サービス提供企業名
・サービス名
・サービスリリース時期
・現状の事業規模
・サービス概要
・想定するミニアプリの認知・利用の促進方法<開発会社の情報>
・スマートフォン向けwebアプリやRESTful APIを利用したアプリケーションの開発・実装経験などの実績記載
・スマートフォン向けWebアプリケーションの開発・実装経験の有無について、具体的に記載
・Javascript Webアプリケーションフレームワーク(Vue.js, React, Angular等)を利用したアプリケーションの開発・実装経験の有無について、具体的に記載
・Javascript Webアプリケーションフレームワーク(Vue.js, React, Angular等)を利用したアプリケーションの開発・実装経験の有無について、具体的に記載
・PWA(Progressive Web Apps)の開発・実装経験の有無について、具体的に記載<
引用:LINE for Developers「よくある質問」
いずれにせよ企画段階の審査が通らなければ、開発することもその先に進むこともできません。
審査に通過するために気をつけることもお伝えします。
LINEミニアプリの審査基準
LINEミニアプリ審査のチェックポイントは以下3点。
例:会員証発行・提示、順番待ち・予約、テーブルオーダー 等②実店舗や貴社JP等から積極的に利用誘導していただけるシナリオか?
例:店舗掲示物からQRコードでの利用誘導、公式サイト内リンクでの利用誘導 等
③ユーザーにとって面倒な手続きが不要なUI設計になっているかどうか?
例:会員登録やログインなどが不要か、必要以上に情報取得はないか 等
引用:LINE for Business「LINEミニアプリ エントリー窓口」
言い換えると「ユーザーにとって価値があり、使ってもらえる努力をしていて、ユーザーが使いやすいデザインになっているか」ということですね。
上記3点を満たすサービスに関しては積極的に許諾しています。
審査のチェックポイントに問題がなさそうであれば、いよいよLINEミニアプリの開発方法について検討していきましょう。
開発には2つのパターンがあります。
LINEミニアプリ開発の手段2パターン
LINEミニアプリ開発は実現したいサービスのレベルによって、2パターンから選択できます。
- パッケージ活用
- 個別開発
パッケージ活用ではLINEアプリの開発会社などが提供しているパッケージ化されたソフトを活用してLINEミニアプリを開発出来ます。
実際にLINEミニアプリの活用事例を見ていると、デジタル会員証やLINE予約、テーブルオーダー、整理券発行でパッケージを活用し開発している企業も多数。
コストを抑えられるうえ、開発にかかる期間も短いため迅速な導入が可能です。
ただしミニアプリに組み込める機能はある程度限定され、競合と差別化できるような独自機能や自社のデータベースと連携したOMOの実現まではたどり着いていません。
そこで選択される開発方法が「個別開発」です。
どちらかと言うとこちらの開発方法がもともとの開発イメージと近いかもしれません。
LINEミニアプリの開発会社へ委託して専用のミニアプリをデザインし、開発・提供する方法です。
単一の機能をLINEに持たせたいならパッケージ活用ですぐに実現出来ますし、もう一歩踏み込んだ機能を実現したいなら個別開発がベターです。
と言ってももう少し比較材料が欲しいでしょうから、それぞれの開発方法について踏み込んで見ていきましょう。
LINEミニアプリ開発でパッケージ活用する場合
パッケージ開発の事例:ヘアサロンeim
引用:LINEミニアプリシナリオ別事例集「eim」
2021年3月に開業したヘアサロンeim(アイン)では、パッケージ開発で「デジタル会員証」のLINEミニアプリを提供しています。
デジタル会員証を導入したことで顧客の来店状況が可視化され、各顧客への能動的なアプローチが可能に。
LINEミニアプリの提供を開始してから来店顧客の会員登録率は70%以上と好反応です。
地域に根付いた店舗経営では一度来店した顧客とどれだけ深い関係を築き、リピーターになってもらえるかはとても重要な指標ですよね。
そのためには顧客とのデジタル接点の創出と来店状況に応じたメッセージ配信が必須と考えていたそう。
CRMとの連携が可能なLINEミニアプリでのデジタル会員証の提供と公式アカウントでのセグメント配信はまさに上記に適したマーケティングソリューションです。
引用:LINEミニアプリシナリオ別事例集「eim」
想定開発費用:10万円
LINEミニアプリをパッケージ型で開発する場合、初期費用は10万円ほどが相場です。
この他システムの利用料や保守費用として月額1~2万円ほどで運用できます。
必要開発期間:1日〜
開発にかかる期間は開発アプリの内容や開発会社、タイミングによって早ければ1日で開発できる場合も。
それだけパッケージを利用した開発は容易でありシンプルで、その文複雑な構成は組めないということですね。
パッケージ開発のメリット
パッケージ利用でのLINEミニアプリ開発のメリットは何と言っても「低開発コスト」と「スピード感」です。
初期開発費用10万円ほどで開発を行い、月額で1~2万円ほどを支払えば利用できます。
また、シンプルな機能であれば1日で開発できるほどの簡単で、すぐにサービス提供できるのも魅力です。
パッケージ開発のデメリット
一方で、パッケージ利用でのLINEミニアプリ開発のデメリットはやはり組み込める機能に制限があること。
少数店舗でLINE予約や整理券番号の初番、デジタル会員証の導入などのうち1つの機能だけを提供開始したいというニーズには十分答えてくれます。
最近ではプログラミング不要でLINEミニアプリを自社開発するためのクラウドサービスも登場しています。
引用:PR TIMES「“onLINE”でノーコードLINEアプリ開発 API活用でLINEがマーケティングの即戦力に」
ミニアプリの活用ハードルは徐々に低下しつつありますね。
一方でパッケージ利用では開発しきれない機能を追加したい場合は開発会社に委託して個別開発が必要です。
LINEミニアプリを個別開発する場合
個別開発の事例:カネボウ
引用:LINEミニアプリシナリオ別事例集「KANEBO」
カネボウ化粧品は顧客との接点をオンライン上で持つことを目的に3ブランドで「デジタル会員証」のLINEミニアプリを開発。
2020年10月より提供しています。
もともと自社のネイティブアプリで会員証の提供を行っていましたが、LINEミニアプリでは既存アプリの登録率よりも20%以上多くの会員を獲得。
インストール不要で利用できることから顧客の利用ハードルが低いことが1つの要因でしょう。
また、既存アプリを43%上回るメッセージ開封率を記録しており、LINEという媒体を活用することのメリットが見てとれます。
引用:LINEミニアプリシナリオ別事例集「KANEBO」
カネボウのようにブランディングを意識したデザインやユーザーにインパクトを与えるような顧客体験をミニアプリに組み込みたいという開発意図がある場合は個別開発を選択することになります。
想定開発費用:300~500万円
LINEミニアプリを個別開発する場合、かかる費用は300~500万円ほどが相場です。
既にあるテンプレートを使用するのではなく、1から開発会社とミーティングを重ねて製作していくことになります。
必要開発期間:3ヶ月〜
開発会社との打ち合わせや調整、そして実際の開発作業を含めて開発期間の目安は3ヶ月〜です。
パッケージ開発のようにはスピーディーにいきませんので、スケジュールはしっかりと握っておく必要があります。
個別開発のメリット
個別対応でのLINEミニアプリ開発のメリットは、パッケージ開発では実現できないことが実現できる。これに尽きます。
パッケージ開発はどうしてもテンプレートの枠からはみ出る例外的な対応は出来ません。
一方で個別開発は柔軟かつダイナミックなミニアプリが実現可能です。
個別開発のデメリット
個別対応でのLINEミニアプリ開発のデメリットはまとまった開発費用と納期がかかることです。
LINEミニアプリの導入によって見込める利益やコスト削減額を比較し、費用対効果を測りましょう。
LINEミニアプリの開発には審査が必要
LINEミニアプリを提供するには「事前審査」と「リリース審査」、合わせて2回LINE社の審査を通過する必要があります。
・事前審査
事前審査ではLINEミニアプリの企画書を提出。
企画書にはサービスの説明(名称・提供時期・概要等)と開発・実装実績を記載します。
審査基準は以下の通りです。
例:会員証発行・提示、順番待ち・予約、テーブルオーダー 等
②実店舗や貴社JP等から積極的に利用誘導していただけるシナリオか?
例:店舗掲示物からQRコードでの利用誘導、公式サイト内リンクでの利用誘導 等
③ユーザーにとって面倒な手続きが不要なUI設計になっているかどうか?
例:会員登録やログインなどが不要か、必要以上に情報取得はないか 等
引用:LINE for Business「LINEミニアプリ エントリー窓口」
・リリース審査
リリース審査では、サービス提供会社の情報と開発会社の情報を見られます。
サービスではなく会社自体に焦点が当てられていますね。
審査のサポートも開発会社に任せられる
LINEミニアプリを開発するにしても審査に通過しなければ提供できないというのはあまり知られていないことかもしれません。
「審査に通らなかったらミニアプリでやろうとしてたことが実現できないじゃないか」と不安に思うかもしれませんが、大丈夫です。
審査までサポートしてくれる開発会社もあります。
貴社が想定しているLINEミニアプリに適した開発会社を見つけられると私たちも嬉しい限りです。